打たれ弱いママの徒然日記ー子育てや留学体験記など

打たれ弱いママの日々を綴ります。

長期海外生活者の悩み:危う気なアイデンティティ

先日、帰国子女独特の悩みに関する記事を見た。 

 

「帰国子女って、大学入試も簡単だし、楽してるよね」なんて言われがちだが、彼らには彼らにしかわからない苦悩がある。

 

単身渡英した私は、厳密に言うと帰国子女ではない。海外生活が長い日本人という点では同じなので、理解できる所も沢山ある。

 

そこで今回は、「海外生活が長い人の悩み」について書いてみる。

 

 

イギリスという国は、各国からの生徒が集まる国。とくに、私の母校、ロンドン大学(UCL)では、その傾向は顕著だった。

 

イギリスは、歴史上最大の面積を誇った大英帝国の本家。さらに、ロンドンは首都である。

また、UCLという大学は、イギリス国内では、性別・民族問わずに門戸を最初に開いたリベラルな校風だ。

人種・性別・宗教・国籍問わず、本当に色んな人がいた。

 

非イギリス人の生徒たちは、ざっくりと分類するとこんな感じが多かった。※ざっくりと、なので、抜け落ちはあります

 

1.インターナショナルスクール出身者

インターの出身者には主に2パターンある。 

①親の仕事で、世界各国あっちこっちに住んでいたことがあり、勉学の一貫性を担保するためにインターに通っていた。

転勤族である商社、銀行マン、外交官の子供などが多い。

  

②居住国を引っ越したことはないが、親の教育方針でインターに通っていた

親の職業に特にこれといった偏りはないが、この類のお家は大抵、かなり裕福だ。インターの学費は高い。

①のパターンの場合、親の雇い主である企業(つまり、家族が振り回される原因)が、ある程度学費を援助してくれる事が多いが、②の場合は援助はほぼゼロ。どんな資産家ならば、そんな大金を払い続けられるのか、私には想像がつかない。

 

 

2.中高からイギリス留学している、イギリス寮制学校の出身者

15歳、またはそれ以下の年齢からイギリスの寮制学校に、親が子供を送り込むパターンが多い。

 

私は、節約のためにホームステイし、寮にこそ住まなかったが、私はこの分類に当たる。大学入学前のイギリス滞在期間はわすが2年だが、こうした留学生の多くは4年以上寮制スクールに在籍することが多い。

(限られた英語力で渡英し、2年間で大学に入れるまでの勉強をするのは、結構辛かった。節約はできたが、人にオススメできない茨の道である)

 

1-①のインターナショナルスクール生が、イギリスの寮制学校に入ることもある。親の駐在任期が終わり、親は日本に帰るけど、子供はイギリスに行く。

これまではずっと英語で教育を受けていたのに、いきなり高校から日本語で、というのは難しいものがある。

 

 

3.ヨーロピアンスクール出身者

ヨーロピアンスクールとは、欧州内にある英語で教育を受けれる学校である。国際規格であるインターナショナル・バカロレア、IBが取得可能。EUの官僚の子供が多かった。

 

 

 

非イギリス人が、イギリスにて教育を受ける。

 

これが何を意味するか。

 

自分の母国語、自分がアイデンティティを感じる言語とは別の言語で授業を受け、発言し、論文を書く。

 

英語力は一朝一夕で身につくものではないので、当然ながらイギリス大学に入る前も、英語で授業を受けている(場合がほとんど)。

 

日々、母語とは異なる「外国語」を聞き、話し、読み、書く。

そして、多くの場合、母国から離れて生活する。

 

ここに、帰国子女あるいは海外生活経験が長い人特有の悩みが発生する。

 

 

私は誰なんだろう?

私のアイデンティティはなんだろう?

 

アイデンティティ・クライシスに陥りやすい。

 

10代、特に10代前半は、心理学的にもアイデンティティ形成に重要な時代。幼い頃から海外に居る人は、このアイデンティティが曖昧に、危うげなものになりがちなのだ。

 

周りにそんな人間が沢山いると、そこまで気にならないが、問題は帰国した時に訪れる。

 

危うげなアイデンティティのまま、いつか日本に帰国すると、益々自分のアイデンティティを疑うようになる。

 

人からどう思われるのか、によって、共有し難い悩みを持つことになる。

 

私自身の経験をここで。

 

当初、イギリス留学は1年間のみの予定だったが、イギリスの学校システムに惹かれて私は6年間滞在し、理学修士を得るまでに至った。

 

苦しさもありながらも、2年間のホームステイをし、イギリス人の日常もよく見ていた。悪い所もあれど、私はイギリス人が好きだし、イギリスという国を愛していた。「ここに骨を埋めてもよい」と思えるほど。

大学入学前はたった2年間、留学していただけだが、6年間寮生活をしている留学生よりも、私の方がイギリス人の日常を理解していたと思う。ホームステイの威力は大きい。

 

それほど、イギリスを愛していたとしても、私の国籍は日本であり、あくまで「外国人」として扱われる。それが顕著なのが空港や駅の入国管理。

 

イギリス人の友人と、どんなに仲良く旅行をしても、友人は UK passport holder 窓口(イギリス国籍保持者窓口)に、私は foreign 窓口(外国籍窓口)に通される。そこをさっと素通りできる友人と、入国管理官に、あれこれ質問されてやっと入国できる私とは、ハッキリと境界線を感じた。

 

当たり前だし、仕方のないことだが、「いくらイギリスを愛し、イギリス人のように振る舞っても、私は外国人なんだ」と寂しい気持ちになった。

 

方や、日本に帰国すれば、入国管理なんてあっという間にスムーズに済んだ。けど、日本に溶け込むには、スムーズとは行かなかった。

 

どうスムーズと行かなかったのか…は、長くなるので、また次回に。

 

 

続きはこちら(帰国後もアウェー感は続く)