2016年頃の世界的ベストセラー「サピエンス全史」の感想③です。感想①はこちら、感想②はこちら。
人間は食物連鎖の中間にいる弱い動物。1:1ならばライオンにもサイにも勝てない。なのにその他の動物を押しのけ、世界を征している。そして、人間の中にも序列が発生する。
今回は「なぜヨーロッパ白人だが覇権を握れたのか」、特に思想の部分について書きます。
簡単おさらい
感想①:脳も肉体も優れてない人類が世界征服できた理由=虚構を信じる
感想②:人類が最も信じている虚構=貨幣・お金
今も昔もヨーロッパ白人が覇権を握ってる?
ヨーロッパ系白人がこの世の覇権を握っている。過去500年の歴史、現在を見ても、それは動かぬ事実である。
※アメリカの白人はヨーロッパ人の子孫=ヨーロッパ系白人と記述する。あしらからず。
21世紀では、多くの国が資本主義。そして自由主義。いずれもヨーロッパ発祥のもの。産業革命や資本主義はイギリスから始まったし。
イギリスは一時期「日の沈まない帝国」なんて言われ、めちゃめちゃ強かったけど、そもそもは未開の地だった。古代ローマ時代では、イギリスは辺境の島国扱い。
中世では西ヨーロッパは大して文明度は高くなかった。エジプト・ペルシャ・中国などに比べれば野蛮な土地だった。
それでもヨーロッパが覇権を握ったのは、科学発展の先駆者だったからだ。では、なぜヨーロッパで科学が発展したのか?
科学が進歩した本当の理由
科学が進歩するための絶対条件は2つ。
- 十分なお金
- 好奇心と探究心(自分たちが無知であるという認識)
この2つともが必要不可欠。2つ目の「我々って無知じゃん」認識が生まれたのはヨーロッパが最初であった。
金がなきゃ研究はできない。
金がいくらあっても、研究する気がなければ科学は進歩しない。研究心とは好奇心と「我は無知である」という認識から生まれる。
野蛮ヨーロッパやよりも金のあったオスマン帝国も技術の進んだ中国も、科学発展には至らなかった。我々=無知とは思ってなかったから。
神=全知全能と思ってた?
人間は無知である、と思うようになったのはいつからか。
15世紀頃まで、どうやら人類(のマジョリティ)は「生きるのに必要なことは神様が知ってる。神様が教えてくれる」と考えていた。
「地球は自転してるか」なんて、生きる上で不要な知識。生きるために必要なことは、キリスト・ヤハウェ・仏・神…が教えてくれる。そんな事に興味を持つことすら変な奴・暇な奴だったのだ。ガリレオが変人扱いされたもの無理はない。
※ヨーロッパ以外でも無知認識はあったかもしれないが、奇人変人扱いされてたと推測できる
私の憶測は、ヨーロッパでで大流行した黒死病が原因だと思う。
これまで:生きるのに必要な知識は神が教えてくれる
黒死病後:神は感染病からは救ってくれない
おびただしい死体の山を見ながら、ヨーロッパ人は悟った。神は全知全能ではない。生存のための全てを教えてはくれない…と。
救いようもない事実に直面したからこそ、人間の無知さ神の無力さを思い知った。
「この世には我々が知らない知識がたくさんある」と知った人々は、旅に出た。何かを調べたり、海を渡ったり。
科学の力を使って、海を渡る。
そして「新大陸」、ヨーロッパ人にとっての未踏の土地の存在を知る。
ヨーロッパ人は、銃・病原菌・騎馬を持ち込んだおかげで、南米をあっという間に征服した。そして領有権を主張する。(詳しくは別書「銃・病原菌・鉄」の感想を参照)
「新大陸」っていう呼び方が、ちょっと解せない。そこに住んでる人間も動物もいるのに…
「この土地はまだ誰の物でもないぞ!よし、所有しちゃえ★」ってなぜ思えるんだ。ぶっちゃけ南米の原住民(アステカ)を征服した時とか、だまし討ちしてるし、酷い。
酷い奴らが、結局得をした。
新しい土地を、奴隷を手に入れた。
そして金を手に入れた。
その後の事は、皆様も知っての通り。アフリカから黒人奴隷を強制連行した。 新しい土地で大規模農園(プランテーション)をして、金を更に稼ぐために。アステカ帝国をだまし討ちにするよりも、非道なことだ。
科学の力を使って、非道を重ねた。
金の亡者
人類、誰しも、金の亡者。少なくとも国の中枢に居る奴らはそうだった。
金とは、人類が信じている最大の虚構だ。
我々って無知だね!という謙虚そうな発想を持っていても、金の亡者になれば非道になる。
儲けのために、黒人をモノ(奴隷)扱いし、中国にアヘン(麻薬)を売りつけ… 正直狂ってるとしか思えない。
何よりも金が大事、ってなると他人の命や健康って本当にどうでも良くなるんだな…
感想:私は白人じゃなくて良かった…
「自分も白人だったらなぁ」
そう思ったことがある非白人は多いだろうか?私自身は、イギリス留学中にそう思ったことが何回かある。アジア人=マイノリティであったからだ。単純に「マイノリティだと暮らしにくかった」からだ。
※日本生まれの日本人だけど、私はこの国においても自身がマジョリティだと感じたことは一度もない。これについては話が長くなるし、サピエンス全史と関係ないので割愛する
白人になったら、
世界の覇者の人種になったら、
差別されなくなったら、
生きやすいのだろうか?
反対意見もあるだろうが、結局現在のこの世の覇者は白人である。現在の善とされている資本主義・自由主義・個人主義はいずれもヨーロッパ系白人が作り出した虚構である。
このヨーロッパの台頭の裏には、「人権をまるで無視する」精神がある。
別人種なら、煮ても焼いても奴隷にしても構わない
これが恐ろしいと思った。どの民族にも、日本人にも差別意識はある。在日外国人はなかなか市民権を得られないし、たとえ日本人であっても空気を読まない奴は村八分にされる。
けれど、日本人は、見目形の違う「外人」を遠巻きにするだけだ。武力で捕獲して、奴隷として売り飛ばしたりはしない。少なくとも、国家レベルで奴隷貿易を推奨しなかった。
もちろん、日本人も他国民を奴隷扱いしたり、生いけないことをしている。それは否定しない。現在のヨーロッパも北アメリカも、国家レベルの奴隷貿易はしてないし、人権を大事にしているだろう。
今、私が白人としてヨーロッパや北米に住んでいたら。きっとすごく人権を意識していただろう。そんな中、数百年前の祖先の行為(奴隷貿易やアヘン戦争)を考えると、身の毛もよだつほど、吐き気がするほど自分の生まれを憎む気がする。
同調圧力が強すぎて、日本って住みづらいぜ!と感じることは多々あっても、とりあえず自分の直近の祖先を恥じずに済むのは幸いなのかもしれない。
サピエンス全史の感想が、「自分は日本人でも良かったのかもしれない」となるとは予想外だった。
○○の戦いで△△王が破れて、新しい■■王国が成立した、という教科書的な歴史とは、違った角度からこの世の成り立ちを考える。
さすが世界的ベストセラーになった良書でした。オススメです。